クリプトスペルズをちょっとだけ遊びました:中編
ということで後編……ではなく中編です。やっぱり。
前編を読んでない方はこちらからお読みください。
https://da-kunes.hatenablog.com/entry/2021/12/09/180000
では前編で書いたような体験を踏まえた上で、このゲームについて考えたことを書き連ねていきたいと思います。
NFT分野などは完全に素人の感想となってしまうことは予め了承いただいた上で、それはそれとしてあんまりにも見当違いな点があれば是非指摘していただければ幸いです。
尚、予告していた項目立ては書いてる内に色々変わりました。
このゲームで稼げるのか
まず、私の結論から書いておきます。
・タイミングよく参入して、大口の中期投資をすれば多少稼げはする
・少額の資金でスタートして稼ぐには時間がかかるし割には合わない
・市場の拡大は難しそうだが、ただちに崩壊するとは思わない
「タイミングよく」というのは、強いカードがゲーム内でセールに登場するタイミングでなければ何も投資先がないからです。はい。
まあ特に驚く要素のない普通の結論かとはありますが、こう思うに至った判断材料についてを述べていくのがこの記事のメインになります。
収益化モデル
まず、具体的にどうやってユーザーがこのゲームで稼ぐのかについて。
直接金銭につながるのは以下の2つです。
・NFTを売る
・仮想通貨MCHCを得る
それぞれについて、掘り下げて見ていきます。
NFTを売る
NFTの入手手段
①a.ゲーム内セールでSPLを使って購入する
b.ゲーム内トレードでSPLを使って購入する
②ゲーム外マーケット(運営認可済)で円、ETHを使って購入する
③チャレンジカップの上位報酬
④その他の大会の報酬
⑤採掘から入手
この中で、④と⑤では「カードゲームとして有用かつ高額になるカード」を入手することはできません。
勿論、NFTはNFTとして無意味にはなりませんが、ゲーム外で売るというよりはゲーム内で適当な価格で売ってSPLに変えるような形になりそうです。
売ることを考えた際に一番利回りがいいのは①aです。
新たに発売された強いカードを確保し保持しておけば、販売が期間限定で再販もないという仕様上ほぼ確実に値上がりします。
②は値上がりしきってしまった後だと大きく得することは難しそう。
③はカードゲームに自信ニキなら。
SPLですが、マンスリーミッションで月に800SPL、またギルド対抗戦に参加して成績を残すことができれば、ギルドにもよりますが0~300SPL程度獲得できる計算になっています。これはもうギルドと成績次第なのでかなり曖昧ですが。
まとめると、「SPLはゲームを続ければ少しずつ増えてはいくので、それでNFTを買って保持しておけばお金にはなるよ」ということです。
高額なカードを保持しておけば当然利回りは大きいですが、買うまでの資産を作るのに時間はかかるし、そもそも強くて高くなりそうなカードがセールにいつ登場するかは運営次第です。
以下、⑤の採掘に関する補足。
強運があればここで何か有用なものを引けるのでは? と思った方がもしかしたらいるかもしれないので先に説明しておくと、基本そういうことはないです。
このゲームではフリーを回せば回すほどガンガン採掘チケットが貰える仕様で、私も5日間で200~300枚くらいは貯まりました。
ただし、採掘からデッキに採用できるようなカードは揃えられません。
基本的には何回引こうがブロンズの山ができあがるだけで何にもならない。
だぶついたブロンズを分解することで、10枚につき1SPLもらえますが、まさしく雀の涙といったところ。
超低確率(確率は公表されていません)で排出されるゴールドに関しても、好事家に2000~4000円で売る以外使い道のないもの。
NFTを沢山所持したりゲーム内の称号を揃えることで排出率の上がるシルバーカードは実用圏内のものもありますが、こちらも低確率で種類もありません。
私個人の体験だけではなく各所で聞く話を見ても、100枚200枚チケットがあったところで引けるようなものではないようですね。
まあ超低確率であろうが出現する以上、フリーをこなして採掘チケットを集めることが大事な積み重ねには違いないです。
違いないですが、ガチャの豪運で何かを一発解決! ということは基本起こらないものだということで。
仮想通貨MCHCを得る
MCHCの入手手段
①コツコツミッションをこなす
②ランク戦・各種大会で好成績を残す
①はプライム会員だと月におよそ18MCHC=738円(21/12/11のレート)です。
②はランク戦50位以内で6MCHCとか。1位なら100MCHCだぞ!
まあこちらについては、ゲームをやってるとついでにこれくらいのMCHCが貰えるよ、というだけで特に投資要素はないですね。小銭。
参考:コツコツやった場合に月に得られる収益
ここまで書いたので、折角ですしNFTの値上がりと関係なく得られる数字をまとめておきましょう。
マンスリーミッションをコツコツこなせば誰でも貰えるのが、18MCHCと800SPL。
後は大会などで勝てるか次第。
ある程度カードゲームが上手い人なら初月からもう少し上乗せできると思うし、将来性も加味して月に25MCHCと1000SPL得られることにしておきましょうか。かなり甘めの裁定ですけど。
SPLを円換算する際のレートについては後述しますが、ここでは1SPL=2.5円として……
かなり大雑把に言って合計約3500円くらいでしょうか。
そして、これを手に入れるのにかかる時間ですが、ミッションを終えるためのフリーに10時間、ランク戦とチャレンジカップ、ギルド対抗戦を高い勝率、少ない試合数で終えると仮定してもまあ最低10時間。
20時間で3500円だから時給換算すると……換算しちゃ駄目だな!!
結局、チャレンジカップで上位入賞時に貰えるカードを売っぱらえばそれだけでマンスリーミッションよりいい稼ぎになるので(その月の報酬によるけど)、カードゲームに自信ニキは真面目にフリー回したりなんかせずにチャレンジカップと対抗戦だけアクティブになってればいいのかもしれない。
判断材料
さてここから、最初の方で言った結論を出すに至るまでの判断材料をピックアップしていきます。
1.カードの価格について
ゲーム外の市場をざっくり見た感じ。
レジェンドは、有用なものを手に入れるとしたら50万円はくだらない。
有用なゴールドは1万円以上。
シルバーについても、有用で希少なものは5000円以上するものがある感じですね。
で、カードゲームとしてイマイチなカードはその半分近くとなるものが多いです。
そうみると、レジェンドをスルーすれば10万円前後でそれなりのデッキが組めるってことにはなりますね。思ったよりは安いかも。
環境トップデッキのカード揃えにいったらレジェンド抜きでも20万円近く必要になりそうですが。
……まあ、そもそも欲しい物が適正価格で売られているところに立ち会えるかどうかという問題の方が大きいですね。何せ市場が小さいので。
それはさておき。結論で述べていた「大口の中期投資」のサンプルとして、2019/6のセールで発売されたリミテッドレジェンド(世界に9枚しかない)「大天使フリッカ」と「獅子族シュモン」の値動きについて調べた内容を記載しておきましょう。
購入時はゲーム内のSPLなので円換算が難しいんですが、クリック戦争の勝利者と高値掴みをした人を除くとどちらも50万円前後相当のSPLで購入されたことが記録として残っています。
そして一番最近ETHで取引された値段が、取引日のETHのレートで換算すると、大天使フリッカは90万円、獅子族シュモンは63万円程度で取引が成立しています。
有用なカードなら時間が経てば勝手に値上がりする、という例ですね。
2つのカードの差については単純にカードパワーと色の人気度かなぁと。
といっても、後述しますが「そもそもレジェンドを手放す理由が殆どない」ということで殆ど取引がないんですよね。どちらも最後にETHで取引されたのは2021/7となっています。
2.ゲーム内通貨SPLの価値
前編でも一度触れた、「SPLと円のレートがそう簡単ではない」という話。
5000SPLを買うのに0.05ETHが必要ではありますが、SPL自体はゲームをしていると無から生み出せるんですよ。
上述の通り、マンスリーミッションをこなすと誰でも月に800SPL手に入るわけで。
そうするとどうなるかといえば、当然インフレとSPL安が進んで、円やETHとのレートはどうしても悪くなります。
市場心理的にも、放っておけば際限なく悪くなるとはいかないと思いますが、実際に現状のゲーム内とゲーム外で同じカードの値段を確認すると1SPL=2~2.5円くらいがせいぜいの状態です。
ネトゲのRMTの歴史を鑑みても、ゲームが長く続けばゲーム内通貨のレートが悪化していくのは常識ですからね。
これに関しては既に問題視はされているようですが、ミッションで貰えるSPLを絞ったりしたところで大幅に改善されるかというと微妙なところです。
ゲーム内通貨に為替介入も何もないだろうし、何かウルトラCがない限りは……。
3.カード価値の担保に関して
NFTカードゲームを謳う以上、最大のキモですね。
ここも結論から言うと、「クリプトスペルズが存続する限りの価値の担保」に関してはある程度できていると感じました。
要点としては、
・なるべく調整はしないようにする
・勝率データなどを見て、基本はブロンズの調整案を運営が提示
・ユーザーは所持NFTの量に応じた投票権を持ち、投票で案の可否を決める
・本当にやむを得ずNFTをナーフする場合に関しては、きちんと補填する
・同一カードの再販はない(ここはカード販売ガイドラインに記載)
そんなところでしょうか。
補填の内容も特におかしいとは思いませんでした。
パラメータ調整案が通るかは最終的にユーザーの投票……というところについては、まあなんともですね。調べると過去にドタバタした形跡もある。
価値の担保とも関係するけど、やや逸れる話にもなるのでここについては一旦置いときます。
再販がなく、調整による不安も少ないとなれば基本的にNFTの値崩れを心配する必要はないですね。ゲーム的に上位互換のカードがクソ雑に実装でもされない限りはですけど。
そういう話は今の所まだ聞いてないので、ヨシ!(本当か?)
しかし一方で、これはクリプトスペルズに限った話では全く無いのですが、「ゲームのサービスが終了した後のNFTの価値の担保」に関しては特に何も見当たりませんでした。
NFTゲームに肯定的なメディアはよく「NFTゲームならもしゲームが終わってもアイテムは残る! プレイヤーに帰属する!」などと宣っていますが、「で、残ったアイテムの価値は?」というところに関してはなーんにも触れないんですよね。
「ゲームで使える」という実用性を武器に値段がついている以上、そのゲームがなくなったら価値は暴落するはずです。え、するよね?
紙のTCGならまだ仲間とフリー対戦くらいできるけど、デジタルだとそれもできないし。アートとしての価値を認めれば無には勿論ならないでしょうけど。
別のゲームでも使えるー、みたいな話も一部のカードにはあるみたいですけど。
だからなんやねん感は凄い。
なので、そこに関してはクリプトスペルズに限らないNFTゲーム全体の欺瞞ではあるよなぁ、とは思いました。
4.レジェンドカードのレンタルシステム
カード価値に少しつながる話。
このゲームには、レジェンドカードをレンタルできるシステムが存在します。
一時期廃止になってたらしいですが、ユーザーからの提案で復活した仕組みです。
やはりというかなんというか、レジェンドカードをガンガン買ったプレイヤーにはカードゲームをする気のない投資家も含まれていて、購入されたレジェンドが特に使用されず眠ったままである……という状態が一部であったようです。
環境に出てこないレジェンドというのはカードゲームとしてお話になりません。
レンタルシステムにより、保有者はレンタル料で美味しいし使用者は安価にレジェンドを使えて楽しい、レンタルシステムで新規参入者の敷居が下がればユーザー数も増えて長期的にレジェンドの価値も下がらない!!
……という筋書き。いいのではないでしょうか。
ただ、このシステムは代わりに「レジェンドの所有権が一向に動くことがない」状況も生みました。
後で話すことにつながってくるんですが、この流動性のなさはジワジワ毒になって効いてくるような気がしてなりません。
5.ユーザー数について
まあとにかく少ないです。
ユーザーはカードゲーマー、カードゲーマー兼投資家、あんまカードゲームする気のない投資家と3つの層に分けられると思いますが、前2つを合わせたアクティブ人数はどう多く見積もっても数百人しかいません。
昨日からチャレンジカップが始まったのでランキングを確認してみましたがやっぱりそこは変わらなそうです。
投資家の人数は、セールに参加してる人数を考えればどんなに多くても数十人。カードゲーム一切する気のない投資家はもう殆ど引き上げてしまってる気がするので、もっと少ないかもしれませんね。
大天使フリッカの例は一番利回りのいいパターンですが、別にしょっちゅうレジェンドが実装されるわけではないので……利回りがいいだけでそもそも投資できる絶対額が少ないというか……
考察
この辺りで私が考えたのは、「ユーザーがカードを手放すのってどういう時だろう」ということでした。
何せ仕組みの都合上、トラブルがなければ早々NFTの価格は下がらないのです。
そうすると、基本的には以下の2つだけになるはずです。
1.引退、或いは手仕舞い
2.他のカードを買うために、使う予定のないカードを資金に替える
当たり前の話なんですが、これ冷静に考えると「販売が終わったパワーカードが市場に出てくることが少ない」って話なんですよ。
使わない色のカードを買って、すぐにより高値で売りに出す……といった短期トレードも勿論存在するとは思いますが、それも直後だけの話。
机上論のようですが、実際にマーケットを見た体感とも一致します。
レジェンドのレンタルの項で話した「流動性のなさ」から繋がるんですが、これは後発であればあるほど不便で参入しづらい状況です。
適正価格より高い金額で募集すれば、値段につられて売ってくれる人も現れるかもしれません。しかしそれは当然インフレを招き、後発を苦しめるわけで。
先に参加している投資家が有利なのは当たり前なんですが、このゲームの取引は株式などと比べてもっと露骨で覆しようがない構図だと思うのです。
要は、カードゲームをしようと思う人間は時が経てば経つほど参入が難しくなり。
カードゲームをしない人間は新カード以外基本的に買うことはなく。
カードゲームをしようと思う人間が新たに入ってこなければ、NFTを売りつける先がジワジワ減っていく、という構図。
一方で、無理やり何らかの手段でユーザーを増やしたとして、パワーカードの枚数は変わらないので競争率が上がって値段が釣り上がる(既存プレイヤーはこれを望んでいるでしょうが)。そして入手性が更に悪化するとなれば、増やしたユーザーの定着は望めないでしょう。
さて。
ユーザー、増やしようがなくない?
……前編の方で、「結構面白かったし悪くはない」とか言ってたのはどこいったんだよと言われるかもしれませんが、「それはそれ」なんですよ。
こうはいいましたが、だからといって誰も終焉を望まない以上、クリプトスペルズが緩く小さく閉じた輪の中で暫くまだ存続すると私は思ってます。
発想としても試みとしても面白いと感じたし、復活後は特別何かや誰かを踏みつけて犠牲にしているわけではないと思うので。
それ故に、結論が冒頭で述べたようなものになるわけです。
クリプトスペルズが終焉を迎えるまでの間、この仕組みを楽しむことについて私は肯定的です。
カードゲームの片手間で小銭稼げたらちょっと嬉しいじゃん。
単純に、資産積み重ねて強いカード手に入れてくの楽しいじゃん。
急にIQ下がるじゃん。
もともと、運営母体が小さく大掛かりな改革も難しいらしいですし、ひっそりと生きていく以外の道はなかなか難しいんでしょうかね。
もしかしたら凄いアイデアでアクロバティック進化を遂げるのかもしれないけど、それはもう私の想像の範疇外なので元気にやって欲しいですね。
この結論で締めるのもどうかと思いますが、今回の記事を書いていて「NFTと対戦型カードゲームの相性、やっぱよくないのでは?」と感じずにはいられなかったです。
ただトレーディングするだけのカードゲームならアリかもしれん。
後編は殆ど余談になってしまいそうですが、デジタルカードゲームとして見たときのクリプトスペルズに関しての感想をちょろっと書けたらなーと思っています。
以下に続く。